思想断片

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俗物4:不可知論者

不可知論とは、真理を知るのを不可能とみなす経験論の理屈である。もちろん「真理を知るのは不可能である」と言う命題が真理であるなら、この不可知の真理を知り得たことが謎として残ってしまう。この矛盾に対してカントは、真理に先験的真理と経験的真理の…

自我の先験性

フッサールは、デカルトにおける哲学の第一原理、すなわち「我想う(我)有り」に現れる「我」を、全ての経験に先んじて現れる先験的自我だと捉えた。このフッサールの見解に従えば、デカルトが疑い得ない真理とみなしたのは、先験的自我の実在であり、経験…

ショーペンハウアー(2)

一方で情念における美的判断を物自体の現れにみなす彼の発想は、美的判断を物自体と相関しない合目的的情念に扱うカントの考えと対立している。ここでの両者の見解を折衷する方向は二通りある。一つは、真偽判断や倫理判断と同様に美的判断に合目的性を見出…

ショーペンハウアー(1)

ショーペンハウアーの哲学は、その直観主義、情念の復権、死と向き合う達観思想、宗教的実存への撞着など、ヘーゲル以後に登場した現象学、ならびに実存主義の多くの諸特徴を兼ね備えている。また彼の哲学における選民思想の傾向、および意思発現の生命哲学…

不可知論4(悪の認識)

不可知論は、現象から実体への認識の遡及を不可能とみなす理屈である。当然ながら不可知論では、認識が結果から原因へ遡及することも実質的に不可能である。認識が存在に遡及する道は、既に遮蔽されているからである。したがって経験論では、認識による結果…

宗教2

ソ連崩壊後20年以上を経過したの昨今の世界を見ると、共産主義に代わってイスラム原理主義が台頭し、かつて世界をにぎわせていた資本所有を巡る階級対立も、イスラムとイスラム以外の間の宗教対立にすっかり入れ替わった感がある。もちろんイスラム圏から…

ヴィトゲンシュタイン(2)

カントは、直観の形式として空間と時間の二つだけを提示した。そして空間を物体の存在形式として理解し、時間を意識の存在形式として理解した。それは、デカルトにおける延長と思惟の二元存在、およびスピノザにおける延長と叡智の存在の二形式を、彼なりに…

ヴィトゲンシュタイン(1)

キェルケゴールがヘーゲルに対して得た感想は、「ふむふむなるほど。だからどうした!」である。ハイデガーがフッサールに対して得た感想も、「ふむふむなるほど。だからどうした!」である。そして筆者がヴィトゲンシュタインに対して得た感想も「ふむふむ…

俗物3

先の記事(俗物2)において筆者は、俗物の素養を会話能力の欠陥として説明し、俗物における会話の無意味化を指摘した。そして筆者は俗物の最終形を、自由をもたない人間、すなわち物体化した人間に帰結させた。今回は、俗物が開陳する戯画的な人間観を通じ…

俗物2

過去に俗物論として記載した記事(俗物)において筆者は、会話関係における了解事項についての状況認識力および判断力の欠如を、俗物の素養として指摘した。そもそも会話は、会話関係にある双方の考えが異なるのを前提にする。少なくとも会話の出発点におい…

幸福論

寺山修二によると、アランの「幸福論」は、不幸な個人に対し、自らの躓いた悲劇を、あたかも幸運のごとく解釈せよという内容である。言い直すとアランの幸福論は、いかなる不幸も実は幸福なのだと思いみなし、いかなる困難もチャンスと思いみなすというプラ…

資本構成の高度化モデル

資本主義社会で技術進歩により、その資本構成がどのように推移してゆくのかを、以下でシュミレートした。ここでの資本構成モデルは、資本主義的企業としての末端小売業と機械工業と原材料生産業の3部門、および共同体的原材料生産者を合わせた4部門でイメ…

真的実存

善は自らを基礎づける真理を要求する。なぜなら真理の基礎を持たない善は、恣意的な善であり、つまりは思いつきの善だからである。そのような思いつきの善は、個人においてはもっぱら弦担ぎとして、社会においては迷信として現われる。例えばイスラムでは豚…

善的実存

美とは、刹那的な善の現在への到来である。この刹那的な善は、実際には虚偽への反発にすぎず、真理を希求するものではない。端的に言えば、それは善ではない。このために美は、自らを瞬間のうちにしか維持できない。当然ながら美が次に目指すのは、自らを永…

美的実存

カントにおいて、未来存在は義務として、また必然として、そして善として存在する。だからこそ未来存在についての命題は、定言として現れる。カントの論調は、当然ながら次の論調を導く。それは、過去存在が権利として、また偶然として、そして真理として存…

宗教

マルクスは「ヘーゲル法哲学批判序論」で、宗教を阿片と同等のものにみなした。一切を支配者に吸い取られた貧者は、自らの絶望的な生の苦痛に対して、鎮痛剤を必要としている。しかし支配者は既に、貧者から鎮痛剤も含めて全てを吸い取っている。貧者に残さ…

5次元世界

ここでは伝統的な哲学的宇宙観と現状の理論物理学や大脳生理学などの科学的宇宙観を照らし合わせる形で、形式理論一般を整理する。 カントより前の世界観では、例えばスピノザのように、宇宙は物質と叡智の2次元である。物質と叡智は、物質世界と意識世界の…

俗物

世間的には、時代遅れで目障りな知的凡人を指して俗物と呼ぶように見える。しかし以下では、特にその有害性に着目した俗物定義を行う。基本的に俗物は、自らを俗物と理解する能力をもっていない。ただし後日に自らを振り返って、自らの俗物性に気付く俗物は…

個別性と悲劇

自分の中でことあるごとに思い返す一番好きな言葉は、次のフレーズである。 「喜劇は隠されていた一般性の露呈であり、悲劇は隠されていた個別性の露呈である。」 これはアリストテレスの言葉である。この言葉を見かけたのは、ルカーチの美学の本の中での一…

自己欺瞞な理屈

合理化反対と言えば、非合理主義者に扱い、治安維持法反対と言えば、秩序破壊者に扱うという古典的デマゴギーがある。このようなくだらない理屈は、言葉の目指すものの真偽を別にして、発言者の品格を落とすものである。それを承知でデマゴギーを発信するの…

開示

ハイデガーは自らの哲学を解釈学と命名したことに、すでにハイデガーがとろうとした問題接近方法および解決方法を示している。それは対象をあるがままに捉え、それを解読すれば、おのずと対象の意味を得られる、というものである。これは師匠のフッサール譲…